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Zerkalo ЗЕРКАЛО
公開: 1980/06/14
配給: 日本海映画

    鏡 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      このアンドレイ・タルコフスキー監督の映画「鏡」は、少年の母に対する想いをテーマにしているが、そうした自伝的なテーマよりも、カメラがまさに自己陶酔するかのように、うっとりと捉える"ロシア"の自然の美しさ、それもシベリアの荒涼たる白い大地ではなく、微風が草原の上を走っていく林と草原の緑の"ロシア"の美しさが、例えようもないくらいに素晴らしい。

      タルコフスキー監督のかつての「惑星ソラリス」の科学者たちは、ソラリスの宇宙ステーションの中で、故郷の森や草原、微風の中の木造の家を夢見たが、この「鏡」では、タルコフスキー監督自身が、四十数年前のロシアの村の静かなたたずまいを再現しようとしている。

      この映画は、夏の日の草原と林の静かな風景から始まり、そして同じ風景の中を子供たちと祖父が草原を、ゆっくりと歩いていく穏かな絵のような場面で幕を閉じる。

      それは、ちょうどイングマル・ベルイマン監督の名作「野いちご」の中で、死がもう間近になった老教授がベッドの中で夢見る、幼い日の夏の田園風景のように、どこまでも穏やかで、時間の流れを感じさせない。

      タルコフスキー監督は、ただ少年の日にひと夏を過ごした草原と林の静かな風景を、再現したいがために、この「鏡」を作ったのではないかと思う。

      タルコフスキー監督にとっての映画とは、ドラマでもメッセージでもなく、かつて見た一風景の素晴らしさの記憶を、不可能と知りながら再現し続けるという"夢の装置"なのだろう。

      鉄道の駅からずっと奥まったところにある村の草原の中の一本道を、ひとりの男が歩いていく。すると、男がふと立ち止まる。その時、風が吹く。風はちょうど海の波のように草原を揺るがせ、遠くの方から男の方へと波及していく。

      少年の目にはじめてその風が、草原の上を渡っていく様の美しさに驚いた記憶が、今再び映像で再現されていく----。

      そのことから考えると、この映画の題名の「鏡」とは、"記憶の再現"の意なのかも知れない。

      観ている私も、そんな小さな、再生された風景を見ることで、私自身の記憶、夢の中にゆっくりとすべり込んでいくような心持ちになってくる。

      母親が髪を洗う水、あるいは、母親の髪を濡らす雨。草原を渡る微風、樹々の間から洩れてくる日の光。そうした、触覚で感受される自然のディテールが、"鏡"の中で光り、まるで"雨の匂い"まで感じとれそうになってくる。

      何度でも繰り返し観たい、私の大好きな宝物のような映画だ。
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      2017/03/08 by dreamer

      「鏡」のレビュー


    カガミ

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