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このレビューはネタバレを含みます。 黒澤明監督は、ある時期からカメラを2台か3台を同時に使って、クローズアップとロング・ショットを同時に撮影するという、いわゆる"マルチ・カム方式"というやり方を常用するようになったが、そのやり方が最も見事な効果をあげた作品の1本が、この「どん底」だと思う。この映画「どん底」は、マクシム・ゴーリキーの世界的に有名な戯曲を、陽の当たらない、江戸の場末の最下層の貧しい人々の木賃宿の群像劇に置き換え、泥棒、夜鷹、落ちぶれた侍や役者、巡礼、病気の妻を養っている職人、遊び人などの様々な人々と、嫌われ者の大家夫婦が織りなす辛口の人生模様を、ほとんどが崖下のあばら家の木賃宿で進行させるという作品だ。この複数のカメラを同時に使用するのは、俳優たちの演技をショットごとに中断することなく、一貫した動きとしてとらえるためであり、また、1台のカメラに対してだけいいポーズを見せようという、とかく俳優の陥りがちな態度を捨てさせるためだと思う。つまり、いつ、どこを、どう撮られているという断片化された意識に基づいた演技ではなく、共演している俳優たちの演技に互いに全身で反応し合わせるという、極めて演劇的な演出手法をとっているのだ。小さな狭い木賃宿の中で、多数の俳優たちが鋭く反応し合い、陽気に騒いで絡み合いながら進行するこのドラマにとって、この撮影方法は極めて効果的であり、それにより俳優たちの集団演技は、見事なリアリズムを醸し出していると思う。絶望と希望、真面目さと皮肉、騒がしさと静けさ、陽気さと悲哀、腹黒い男と無邪気な男、猛々しい女と純情な女、昂奮と落胆-----、それらが互いにコントラストをなし、微妙に絡み合う気分や人間像が、絶妙なタイミングで交替し、また組み合わされていく。この柔軟で自在な、黒澤明監督の見事な演出に導かれて変転する"チェンジ・オブ・ペース"の快さは無類の素晴らしさだ。そして、この作品は配役が素晴らしく、実にいい役者をふんだんに使っていると思う。また、あまり有名ではない俳優たちも名優たちと一緒になって、小気味よく動いていると思う。木賃宿の家主は中村鴈治郎で、ちょっと現われただけで因業な親父というイメージがくっきりと浮かぶ。その女房が山田五十鈴で淫乱な悪女で眼の輝きが違う。巡礼の左ト全は、どこまでが本当でどこからが嘘なのか分からない、まことにインチキくさいところがゴーリキーとは違った面白い味になっている。そして、異色なのは駕籠かきの藤田山。相撲の力士で、俳優としては全くの素人なのだが、普通の役者にはない不思議な味があって、しかもアンサンブルにピタリとはまっていたと思う。そして、ラストを鮮やかなベランメエ口調のセリフで締めくくったのは、遊び人役の名脇役・三井弘次でまさに絶品だったと思う。 >> 続きを読む
2017/05/01 by dreamer
「どん底」のレビュー
これぞまさしくどん底です。まさかここまでどん底だとは思いませんでした。しかもその場にいるような臨場感を味わえます。人によっては5分ともたず逃げ出したくなるでしょう。さすが世界の黒澤。やることがハンパじゃありません。 >> 続きを読む
2017/02/19 by 備忘録
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どん底 ドンゾコ 映画 「どん底」 | 映画ログ
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