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アニエスの浜辺

LES PLAGES D'AGNES
ジャンル: ドラマ , ドキュメンタリー
公開: 2009/10/10
キャスト: , , , ,
製作国: フランス
配給: ザジフィルムズ

    アニエスの浜辺 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      齢を重ねるに連れ、残された時間が減る一方で、過去は蘇って来る。思い出に浸る時間も増えてくるに違いない。そして、死とともに、その思い出は失われる。

      記憶された時は、涙や雨が流れ去るように消えてゆくと言ったのは、「ブレードランナー」のレプリカントだった。このアニエス・ヴァルダ監督の私小説的なドキュメンタリー映画「アニエスの浜辺」は、81歳を迎えたヴァルダ監督が、自身の失われようとする過去に浸るレクイエムとも言える作品だ。

      映画の冒頭に映るのは砂浜で、浜辺に並べられた写真が過去を呼び起こす仕掛けだ。撮影の対象から距離をとる醒めた視線と温かい眼差しが交錯する。

      ヴァルダ監督のこの映画で試みた手法は、実に巧みだ。少女の頃の思い出から学生時代、映画製作、「シェルブールの雨傘」等で有名な映画監督の夫ジャック・ドゥミとの出会いなど、ほぼ時代を追って語られるのだが、いわゆる自伝とはほど遠い。

      人生に物語を求め、物語に沿って過去を綴り直すような作為は、微塵も感じられない。

      例えば、不治の病に罹った夫ジャック・ドゥミの少年時代を、夫に残された時間と競い合うように映画に撮るエピソード。仮構された夫の少年時代、死を目前に控える夫の表情、そして夫を失ってから20年を経ても、悲しみの去ることのないヴァルダ監督の現在が並び、まるでモザイク模様のように組み合わされてゆく------。

      そこにあるのは、人生に訪れた喜びと悲しみの瞬間。そして、それぞれの瞬間は過去という額縁から飛び出して現在と等価に並ぶ。

      何が昔で何が今かを区別することのできない、映画という媒体の特徴を生かし、白黒写真はカラーに入れ替わり、過去と現在が交錯するのだ。

      このフランスを代表するアニエス・ヴァルダ監督は、かつてヌーヴェル・ヴァーグの中でも先鋭的なセーヌ左岸派のひとりとして、アラン・レネ、クリス・マルケル、マルグリット・デュラス、ロブ・グリエ監督などと共に活躍した人だ。

      思えば"過去と現在の交錯"は、アラン・レネ監督やマルグリット・デュラス監督の"取り憑かれたテーマ"だったと思う。そして、半世紀を経てセーヌ左岸派の芸術が見事にその円熟した成果を見せたのが、この作品であると思う。

      人の命も思い出も、浜辺に寄せては引いていく波のように、はかなく、美しい。人生に残された時間よりも過去の記憶が重くなった人にこそ、観てもらいたい映画だとつくづく思う。
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      2017/05/23 by dreamer

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