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砂の女

ジャンル: ドラマ
公開: 1964/02/15
製作国: 日本
配給: 東宝

    砂の女 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      この映画「砂の女」は、読売文学賞を受賞した小説を、原作者の安部公房自らが脚色した作品で、「利休」「他人の顔」の芸術派監督の勅使河原宏が監督した作品だ。

      映像化は困難であると言われた、観念的な原作を勅使河原宏監督は、見事なモノクロームの映像化に成功していると思う。1964年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞受賞というのも納得がいく秀作だ。

      この映画には安部公房の原作にある抽象的な寓意や観念の面白さと、勅使河原宏監督の具象的なイメージの力強さ----、この二つのよくバランスのとれた融合がみられ、文明の囚人となった現代人を象徴的に描き、痛烈なショックを与える、"前衛的でより抽象的な観念映画"になっていると思う。

      砂丘地帯へ昆虫採集に来た教師(岡田英次)が、親切な村人(三井浩次)の勧めで、砂の崖下の一軒家にある後家(岸田今日子)の家に泊まることになる。翌朝、男が気付くと、外と繋がる縄梯子が外されていて、そして穴は絶えず砂が崩れ落ち、女が砂をかき出している。男は自分がその労働力として囚われの身になったことを知り愕然とし、必死で脱出を図ろうとするが果たせない----。

      この後、映画は2時間半かけて、男を見事に"閉じ込めた"女と、女に"閉じ込められた"男の生態だけを、じっと見つめていくのだ。そして、カメラは最後まで、二人以外の世界を見ることがない。

      それでいて、この二時間半は、単調でもなければ決して退屈でもなかった。もちろん、穴にこもった男女はやがて"なるような"関係に堕ちていき、映画は砂にまみれた二人の姿勢を、まじろぎもせずに凝視していくのだ。

      そんな場面や、男が繰り返し試みては失敗する脱走----、そのスリルやサスペンスが、観ている私の興味を絶えず画面の中へと引き寄せるのです。

      勅使河原宏監督の演出は、筋の語り方からみても、リアルな迫力があり、この男女二人の物語から、我々観る者が、思うさま作者の豊かな寓意や暗示を楽しめる充実感を享受できるのだ。

      女はいつも男を縛り付けるもの、男は常に女に閉じ込められる存在----、そんな定説を信じるなら、この映画は"男女の永遠の宿業"を描いたドラマだと言えるのかも知れない。

      絶えず、穴からの脱出を狙う男は、結局は女の体にも手を付けて、住人となって同化し、暮らしの中へ飼育されていってしまう。それこそが、男一般の"戯画化"であり、そしてまた、男が穴に"閉じ込められる"のを嫌い、女はひたすら穴に"閉じこもる"というこの話は、言うまでもなく、人間の自由感の両極を図式化したドラマでもあるのだ。

      一つ穴で同じ暮らしをして、一人はそれを死にもまさる不自由だと考え、一人は逆にこれが最高の自由だと思う。一つのことも、"認識の在り方"で自在に価値を変える、という皮肉は、真面目な写実主義で貫かれたこの映画に、そこはかとないユーモアも漂わせていると思う。それがまた、この映画を、単調な重苦しさから救っているのだとも思う。

      主演の岡田英次と岸田今日子が、そういう"図式的"な男女を自然な具体的演技で体現してみせたのは、実に見事だと思うし、もう一つは、この映画の成功の大きな要因として"砂の表現"のうまさがあると思う。

      広がる砂、のしかかる砂、忍び込む砂、絡みつく砂----。勅使河原宏監督は、瀬川浩のシャープな撮影を得て、ここで砂というものを見事な生き物として描き出していると思う。中でも、砂が粘液のように砂の上を流れ迫って来るイメージの不気味な繰り返し----。

      この「砂」は、我々を取り巻く世界そのものの不確定な圧力の象徴のようにも見えてくる。いずれにしても、安部公房が、その鋭い直観と思想で描き上げた夢を、そのまま勅使河原宏監督は映画というものに再創造してみせた、と言えるような、圧倒的な"造形的な迫力"が、そこにはあるのだ。

      裁判所の失踪宣言書にかぶって、男が砂の中で科学的発見に新しい人生を見出しかけるラスト。複雑な味わいを持った、この乾いた締めくくりも、かなりの充足感を覚えさせるラストシーンであったと思う。
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      2016/12/26 by dreamer

      「砂の女」のレビュー

    砂の女
    スナノオンナ

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