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このレビューはネタバレを含みます。 この映画「砲艦サンパブロ」は、ロバート・ワイズ監督の思想的な立場が一番はっきりと現れている作品で、「ウエスト・サイド物語」に次ぐ、彼の傑作だと思う。この映画で描かれているのは、1926年の中国だ。革命運動が外国の植民地支配に対する強い抵抗運動となって激化している上海から、この物語は始まっていく。列強と並んでアメリカは、砲艦サンパブロという、おんぼろ船を揚子江に派遣するが、この艦の様々な部署の扱いは、安い賃金で働く中国人労働者に任されているので、艦長のリチャード・クレンナは苦慮しているという状況だ。その中で一等機関兵のジェーク(スティーヴ・マックィーン)は、良心的な白人として誠意を持って中国人に接するが、排外運動が激化していく中にあっては、友好的な行動も好意的に受け取られることはないのだった。そして、彼が可愛がっていた中国人の青年が、外国人の仲間、犬だということで、岩壁で中国人による私刑を受け、なぶり殺しにされようとしているのを見て、苦しみから救ってやるために、艦上から狙撃して射ち殺すはめになる。ジェークの友達の水兵は、艦を脱走して中国人の酒場の女と結婚するが病気で死に、その女も暴徒に殺されてしまう。サンパブロ号は、中国人の群衆の侮蔑の的になり、艦長は名誉回復のために、奥地の伝道所にいる宣教師を引き上げさせに行った時に、ジェークは伝道所に勤める教師のシャーリー(キャンディス・バーゲン)と再会するが、宣教師たちは頑固で引き揚げに応じようとしない。そこへ暴徒が迫り、ジェークは弾丸に倒れてしまう----。この映画はリチャード・マッケンナのベストセラー小説の映画化で、「北京の55日」などの従来のハリウッド製の東洋スペクタクルとは異なり、西欧文明のアジア進出に対する反省と疑問を投げかける作品になっていると思う。考えてみれば、この映画の物語が、公開当時のアメリカではベトナム戦争が泥沼化していた時期であり、ベトナム戦争に対するロバート・ワイズ監督の心からなる反戦のメッセージであることは明らかだ。そして、中国人の描き方が、いかにも無知で狂暴な恐るべきアジア人という、型にはまっており、一方のアメリカ人は、善意の持ち主で、人なつっこい好人物ぞろいとなっているあたりは、これがアメリカ人好みの偏見の上に成り立っている作品であることは否定できないが、とにかく、アメリカ人がアジアに武力で進出していること自体がトラブルの元凶であり、そうした現地の民衆に憎まれる状況の下では、アメリカ軍自体が頽廃に陥って、解体してしまわざるを得ない、というロバート・ワイズ監督の指摘は、実に念入りに克明に行なわれていると思う。ジェークと、その恋人シャーリーとの会話で、なぜ我々アメリカ人はアジアで憎まれるのか、ということに触れて、彼がこう言う。「もし中国の軍艦がミシシッピー川に浮かんでいたらアメリカ人はどう思うだろう?」----と。ロバート・ワイズ監督は、映画監督の職人として、その地位を着実に固め、そして言うべき時には、優しく、しかし厳しい怒りの思いを胸に、はっきりしたことを言う、良きアメリカの一市民なのだと思う。 >> 続きを読む
2017/02/17 by dreamer
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