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天国の門

Heaven's Gate
ジャンル: ドラマ , アクション , 西部劇
公開: 1981/09/26
製作国: アメリカ
配給: ユナイト映画

    天国の門 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 4.0 ハラハラ クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "映画会社ユナイトを倒産させた事で有名な、マイケル・チミノ監督が実在の事件ジョンソン・カウンティ・ウォーを描いた問題作 「天国の門」"

      「ディア・ハンター」で1979年4月、アカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞したマイケル・チミノ監督が、その勢いにのって受賞直後に撮影に入り、モンタナ州グレーシャー国立公園などに1年間にわたる、現地での一大ロケーションを敢行し、19世紀末の西部の辺境の町と大陸横断鉄道を再現するなどの、執念に燃えた執拗な完全主義を貫いて、4,500万ドル、当時の日本円換算で約100億円に達する、史上最高と言える製作費を使い、大手映画会社ユナイトを倒産させるに至った、色々な意味での問題作です。

      3時間45分に及ぶ最初のフィルムがニューヨークで公開されるや、マスコミによって徹底的な攻撃を受け、1週間で上映が打ち切られる事になりました。

      公開当時のマスコミ各紙は、「チミノは"ディア・ハンター"の成功を勝ち取るために悪魔に魂を売り渡し、そしてまさしく悪魔がやって来たと思える程に"天国の門"は完全なる失敗」と辛辣に批評しました。

      チミノ監督は直ちに再編集に着手して、これを大幅にカットして再上映させましたが、アメリカ本国での評判は盛り上がらず、カンヌ国際映画祭でもグランプリを逃してしまいました。チミノ監督は、むしろ、アメリカでの批評を無視して、初心を貫くべきであったと思います。

      アメリカ本国でこの映画が葬られた原因の一つは、チミノ監督が費やした膨大な巨額の製作費でした。公開当時、斜陽のハリウッドにとって、このような濫費は許されないという経営的な立場からの批判が、フランシス・F・コッポラ監督の巨額の製作費による超大作「地獄の黙示録」(製作費3,150万ドル)以来、強まっていたからでした。

      この映画の冒頭の1870年、ハーバード大学の卒業式やパーティのシーンは、イギリスのオックスフォード大学でのロケですが、この上映時間にして約30分程のシーンだけで800万ドルを要したと非難されたのです。(当時の「クレイマー、クレイマー」の総製作費が660万ドル)

      しかし、この延々と続くシーンは、「ディア・ハンター」での結婚式の冗長なシーンと同じく重要な伏線となっており、また、最後の長い混戦シーンとも見事に対応しているのです。

      夢と希望に燃えていた二人の卒業生が、20年後、アベリル(クリス・クリストファーソン)は西部で連邦保安官となって貧しい東欧移民の側に立ち、アーバイン(ジョン・ハート)は牧場を経営する牧場主となり、大牧場主の協会側に立つようになりますが、両者の友情は卒業当時と全く変わらないのです。

      ハーバード大学のゴードン・サットン総長(ジョゼフ・コットン)の卒業生に与えた式辞を二人共、決して忘れてはいないのです。

      「諸君はこれから責任を負う事になる。この大学も図書館も、富を追求するために建てられたのではない。アメリカの社会構造は排他的だ。もし他の人種、習慣に敵意の垣根を築くなら、諸君の責任は倍になる」と----。

      そして、この言葉こそ、この映画の重要なテーマになっているのだと思います。

      そして、この映画がアメリカ人の神経を逆なでした最大の原因は、題材となっている1892年4月にワイオミング州北部で起こった実在の事件、"ジョンソン・カウンティ・ウォー"が、アメリカ合衆国の西部開拓史の"秘された恥部"であり、当時のレーガン大統領の掲げる"開拓精神"と反するからでした。

      ユニオン・パシフィック鉄道はその沿線開発のため、まず東部およびヨーロッパの資産階級に呼び掛けて牧畜業に投資させました。また一方で、ドイツ、ポーランド、ロシアなどからの開拓農民の集団移住をも奨励しました。

      しかし、権力を持つ大牧場主と貧しい開拓農民との間に、自由放牧の牛を巡って争いが絶えず、シャイアン・クラブと言われる牧場主連合は、ガンマンを雇って農民の団体を弾圧しようとしたため、農民側に立つ保安官の率いる自警団と衝突する事になります。

      このTA牧場の決戦で窮地に立ったシャイアン・クラブ側は州兵の援護を要請し、牧場主に同情的なバーバー知事は、ベンジャミン・ハリスン大統領の許可を得て、ホーン大佐指揮の騎兵三個中隊を出動させたのです。

      史実ではホーン大佐は現地に到着してみて、農民に包囲されているシャイアン・クラブこそが不法侵入者であると判断して、逆にクラブ側の人間を逮捕したりしています。

      しかし、映画ではこの騎兵隊が農民側を、「軍の権限により、全員逮捕する」事になっているのです。「人民を助けるのが軍隊の任務ではないか!」とのアベリル保安官の抗議を通して、「ディア・ハンター」のヴェトナムで見た"軍隊の本質"を、チミノ監督は糾弾したかったのに違いありません。

      この敢えて意図的に、史実を曲げた映画の結末が、公開当時のアメリカ人の神経を逆なでし、反感を買った事が容易に想像されます。

      牧場主側のガンマンから、後で農民側に移るチャンピオン役は、「ディア・ハンター」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリストファー・ウォーケンが演じ、友情を互いに感じるアベリルとチャンピオンの二人に愛される娼婦エラ(イザベル・ユペール)は、史実では、女家畜泥棒として、雇い主のアベリルと共に、ガンマンによって絞首刑にされています。

      このような史実を離れてイタリア系移民のマイケル・チミノ監督は、「ディア・ハンター」の時と同じく、友情と愛と、そしてアメリカのバイオレンスを、弱い移民側に立って強調しようとしているのだと思います。

      「未知との遭遇」でアカデミー撮影賞を受賞した、ハンガリー生まれの名カメラマン・ビルモス・ジグモンドの撮影が、この「天国の門」という一大叙事詩をセピア調の絵画的な色彩で、静かな中にも激しさを秘めたタッチで描いていて見事でした。
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      2016/08/05 by dreamer

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