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地下水道

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ジャンル: ドラマ , 戦争
公開: 1958/01/10
製作国: ポーランド
配給: NCC=日活

    地下水道 の映画レビュー (最新順)

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    全2件
    • 4.0

       廃墟になった街並みを俯瞰する構図が最初に現れ、これは、R.ロッセリーニの『無防備都市』の影響かと思わせる。しかし、本作の制作が、戦後既に10年以上経っている訳であるから、今更ネオ・リアリズモでもないだろう。

       場面は、建物を一つ一つ爆破したり、火炎放射器で部屋を外から焼いているところにすぐにつながる。ヒトラーの「ワルシャワを灰燼に帰せ!」という、無慈悲な命令が思い出される。この命令を実行したのが、ドイツ国防軍ではなく、SSであったことも注意したい。ナチス・ドイツ下の占領地区の行政は、基本的には内務省の管轄であるが、本来党機関であるSSは、警察機関をも牛耳って、それに軍事的暴力組織である武装SSをも加えて、ポーランド総督府内でも事実上の権力を行使していた。

       映画の最初のクレジットが終わると、ナレーターが入り、1944年8月1日から始まった「ワルシャワ蜂起」は終盤に入ったことが分かる。ザドラ(Zadra)中尉以下の、緒戦からは大幅に人員が減った中隊の、主要な面々が紹介される。逞しいマドリ(Mądry)少尉、この少尉との恋に落ちている女性兵士ハリナ(Halinka)、クラ(Kula)軍曹、精悍な23歳の准尉コラブ(Korab)、そして、作曲家ミハウ(Michał)などである。

       仮の拠点に戻った中隊は翌日の9月26日(蜂起開始からほぼ2ヶ月)、ドイツ側から攻撃を受ける。ドイツ側は、装備の良さを誇って、遠隔操作で、キャタピラーで動く小型の自爆戦車ゴリアテ(巨人ゴリアテに因む)を二台投入、これを果敢にもコラブ准尉が遠隔操作線を断ち切って停止させる。その際彼は、左胸に貫通銃創を受ける。その彼を甲斐甲斐しく手当てするのは、綽名で“Stokrotka“(デイジー)というブロンドの美女である。彼女は、この戦時下、闇商売をやっており、そのために、ワルシャワの地下水道の経路もよく知っているのである。

       こうして、都市中央部にある本部から指令を受けて、ザドラ中尉は、ドイツ側の集中攻撃を受けている、ワルシャワ市内を南北に貫通するヴィスワ川の西岸北部にある旧市街地から市内中央部に地下水道を通って、中隊を「転進」させる。 Stokrotkaは、自分の愛するコラブ准尉に付き添って、道案内をザドラ中尉に申し出る。既にこの時には中隊の人員は、将校2名、下士官5名、兵隊20名に減っていた。

       上映時間約95分の後半、映画は、この地下水道内での、危機的状況下、暗渠の汚水と汚臭の中、迷路のような地下水路を「行軍」し、上からはガス弾が投げ入れられ、それが嫌で、上に出れば、SSが待ち受けているという、地獄絵図となる。果たして、生き残れるのは誰か。

       さて、映画でははっきりと示されないが、史実から、ヴィスワ川の東岸にいたソ連・赤軍がなぜワルシャワ蜂起軍を助けなかったかという、反共の宣伝に使われやすい事柄について、歴史の公正な解釈を望む者として一言言っておきたい。

       まず、ポーランドとソ連とは長年国境線問題で対立しており、それは、ポーランド第二共和国が1939年に消滅し、最終的にロンドンに居をおくことになるポーランド亡命政府にも引き継がれたこと、1943年4月に、ソビエト内務人民委員部(NKVD)によって、ほぼ3年前に約15.000から22.000人のポーランド将校、国境警備隊員、警官、一般官吏、聖職者が殺害された虐殺事件、いわゆる「カティンの森虐殺事件」がナチス・ドイツにより大々的に喧伝されたことが、ワルシャワ蜂起の事前の状況として存在した。

       こうして1944年に入って、ナチス・ドイツの東部戦線において、ソ連・赤軍の攻勢により、ナチス・ドイツからのポーランド解放がいよいよ現実味を帯びてくると、ソ連は亡命政府との和解を図り、同年5月20日から7回にわたってポーランド亡命政府と秘密交渉を行なった。が、結局J.スターリンは、3年前の独ソ戦開始の日の6月22日になり、領土要求に応じない亡命政府に見切りをつけ、7月に赤軍がカーゾン線(カーゾンとは、イギリスの外相の名前で、彼がソ連とポーランドの間の国境線を提案したことから、この名前が付いており、現在のロシアとポーランドの国境線もほぼこの線に沿って通っている)を越えた時点で、ポーランド国民解放委員会、いわゆる「ルブリン委員会」を打ち立てた。こうして、既に42年以来存在した、共産系の軍事組織は、改組されて「人民軍Armia Ludowa」となり、「国内軍 Armia Krajowa」(「国民軍」ではない)と対抗することになる。

       国内軍とは、ポーランド地下政府のパルチザン抵抗運動の軍事組織で、ポーランド国外にある、亡命政府が持つ軍事組織「ポーランド第一軍団」(映画『橋は遠かった』を観よ)と「第二軍団」(イタリア戦線にて活動)に対応するものである。こうして、44年8月1日、赤軍が入ってくる前に、自力でポーランド解放を目指した亡命政府が命令を出して、隷下の国内軍を蜂起させたのであった。

       共産系の「人民軍」も数は少ないが、蜂起に参加、また、赤軍が8月上半期から9月上旬までドイツ軍の反攻に遭って西進を抑えらえると、赤軍下の「ポーランド第一軍」が9月中旬の一時期ヴィスワ川の西岸に橋頭堡と築くも武装SSに押し戻される。いずれにせよ、こうして、国内軍はドイツ側に追い詰められ、10月2日、63日間の抵抗後、降伏した。

       最後に一言述べると、本作のラストシーンは極めて印象的である。あのように責任感の強い士官には、部下も必ずや最後まで付き従って行くであろうと、どこかの極東の国での、無責任な「上級国民」の振る舞いを見せつけられている昨今、筆者には余計に強く感じられ、あの責任感ある行動は、この絶望的で、陰鬱な映画の中での唯一の「光明」であるとさえ思われた。
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      2021/07/01 by Kientopp55

      「地下水道」のレビュー

    • 5.0

       56年のワルシャワ蜂起、ドイツ軍によって下水道へと追いやられたポーランド国民軍の逃走劇。
       抵抗三部作のひとつで、独軍と対峙するポーランド人がテーマとなっている。ただし、前作「世代」のように志願する若者も、彼らをオルグする共産党員も、ポーランド人の英雄的活躍は欠片もない。
       泥まみれになりながら逃げ惑う国民軍の悲惨な姿がひたすらつづく。人一人がやっと通れる程度の狭い下水道、霧に視界を奪われながらもゴミクズ漂う汚水をかきわけ、その臭いや湿気に喉をやられて咳き込みながら進む兵隊たち。やっとのおもいで辿り着いた出口に鉄格子がはられていると知った時の絶望感、対岸で蜂起鎮圧を静かに見つめているソ連軍の嫌らしさが悲劇を加速させている。
       あらゆるSEが石造りの壁に反響し、おどろおどろい音となって下水道に流れているのも興味深い。咳は負傷者の声と合成され叫び声となり、オカリナは反響を重ねてハーメルンの笛の音と化して迷う兵隊たちを地獄へと誘う。サントラであるはずのチューバの音も瀕死の将校の声と交じり合って、死者のうめきになっていた。
       ソ連支配下で反ナチの英雄とされてきたポーランドのレジスタンスを原体験から描き直すことで真のワルシャワ蜂起の悲劇性を明らかにし、隠喩によって独ソ戦当時のソビエトによる政治的策謀を暴いた傑作戦争映画。
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      2016/01/24 by efnran

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