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切腹

Harakiri
ジャンル: 日本映画 , ドラマ , 時代劇
公開: 1962/09/16
監督:
製作国: 日本
配給: 松竹

    切腹 の映画レビュー (最新順)

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    全4件
    • 5.0 切ない ハラハラ クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      この映画「切腹」は、武家社会の非人間性、権力者の対面を取り繕う偽善を、"切腹"という形で鮮烈に描いた、小林正樹監督にとっては初の時代劇となる作品だ。

      江戸時代というのは、考えてみれば不思議な時代だ。250年以上も戦争がなく、少なくとも平和な時代だった。しかもそれを統治していたのは、武士という戦闘集団だったのだ。

      本来は乱世に生きる筈の武士が、平和な時代を作り出したのだ。実は、そこに矛盾があったのだと思う。武士道という極限状況の"タテマエ"と、平和な時代につつがなく暮らしたいという"ホンネ"。このタテマエとホンネの不一致から、様々な悲劇が生まれたのだ。

      関ケ原の合戦から30年後の三代将軍・徳川家光の頃。戦乱の世が治まり、まがりなりにも平和が訪れていた。その結果、不要になった武士が一気に増加したのだ。つまり、浪人の大量発生だ。暮らしに困窮した浪人が世にあふれたのだ。

      その浪人たちの間で奇妙なことがはやった。江戸の大名屋敷を訪ねては、「暮らしに困ったので切腹して死にたい。ついては、玄関先を貸してほしい」と難題をふっかける。すると、大名屋敷では、そんなことに関わりたくないので、いくらかの金を与えて追い返す。結果として、武士の道をかたったゆすりとなったのだ。

      ある日、女房と子供をかかえ、生活に行きづまった浪人(石浜朗)が、井伊家の江戸屋敷に現われ、「玄関先で切腹したい」といった。普通なら、金をやって追い返す。ところが、井伊家の家老(三國連太郎)はじめ家臣たち(丹波哲郎、中谷一郎、青木義朗)は、普通とは違った処置を取ったのだ。

      「切腹したいのなら、どうぞご自由に。腹をかっさばくところをとくと拝見したい」と居直ったのだ。切腹を自分から言い出した浪人は、後には引けない。思いがけない、予想外の展開に困惑、恐怖しながら、彼は、無理矢理、切腹へと追い込まれていくのだ----。

      石浜朗の浪人は、初めは軽い気持ちで切腹を口にした。平和な時代に切腹など形骸化したとあなどったのだ。ところが、井伊家では逆襲に転じた。「切腹したいのなら、するがいい」と。いわば冗談が本当になってしまったのだ。石浜朗は「武士に二言はないな」と迫られ、否応なく、切腹に追い込まれてしまう----。

      しかも、刀は竹光。貧乏暮らしの果てに、病気の妻(岩下志麻)の薬代を得るため、武士の最後の支えである刀を売ってしまったのだ。彼はその竹光で切腹せざるを得なくなり、悶絶して果ててしまう。時代劇には数多くの切腹シーンがあるが、これほど悲惨な切腹シーンは、今まで観たことがない。

      "切腹をかたったがゆえの悲劇"。だが、それなら武士の道を盾に、彼に切腹を強制した井伊家の武士たちは、本当に武士といえるのか? 権力をかさに着た、ただの恥知らずではないのか? 浪人という弱い立場にいる人間を寄ってたかっていたぶった井伊家の武士たちこそ、武士の道にもとるのではないか。

      "井伊家、非道なり!" そこに登場してくるのが、石浜朗の義父、つまり妻の岩下志麻の父にあたる仲代達矢。彼もまた浪人。とはいえ、豊臣と徳川の闘いに参加したことのある戦中派、実戦派だ。芸州福島藩の重鎮だったが、徳川家の外様政策によって藩が潰され、やむなく浪人となった身である。剣はたつ。しかも、その剣は、実戦の修羅場を何度もくぐってきた生きた剣。道場だけで習った平和な世の剣とは違うのだ。

      この一匹狼が娘婿の仇を取るために井伊家に、たったひとりで乗り込むのだ。時代劇ファンである私を感激させるのは、いつだって、アウトサイダーが巨大な権力に雄々しく立ち向かう時だ。

      そして、この映画での仲代達矢は本当に素晴らしい。私はこの映画での仲代達矢の演技が、彼の出演作品の中でのベストだと思っているくらいだ。

      彼は当時、まだ30歳。同じ小林正樹監督の「人間の條件」で主人公の梶を演じ絶賛され、その後、黒澤明監督の「用心棒」の敵役でも注目された彼は、俳優座の舞台の演技で鍛えた、太く張りのある声、眼光の鋭さ、相手を威圧する面構え。一匹狼として、井伊家の家老、三國連太郎と対決するのだ。

      怨念、怒り、激情のかたまりと化し、その顔はまるで阿修羅のようでもあり、白黒の陰影の深い画面の中で、仲代達矢の目だけが異様に光って、その顔は"ギリシャ悲劇の武将"のようにも見える素晴らしさだ。

      この映画「切腹」は、1963年度の第16回カンヌ国際映画祭に出品され、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」と最後までグランプリを競い、グランプリに次ぐ審査員特別賞の栄誉に輝いたが、仲代達矢の重厚な威圧感を伴った演技は圧倒的だったと思う。

      長い浪人暮らしでのすさんだ風貌、ボロボロの着物、無精ひげ。にもかかわらず、井伊家の武士たちをにらみつける、その眼光の鋭さ。一匹狼というより、それはまるで、"一頭の荒ぶる高貴な獅子"といった雰囲気だ。

      彼が娘婿を残虐に痛めつけた井伊家の武士たちを、ひとりひとり追いつめ、復讐の刃を向けていく斬り合いのシーンは、ピリピリするような緊張感に満ちて、実に素晴らしい。まず中谷一郎を、次に青木義朗を、そして最後、もっとも腕のたつ丹波哲郎との果し合いは、烈風吹きすさぶ荒れ野で行なわれるのだ。

      その対決は、あたかも、黒澤明監督のデビュー作「姿三四郎」での、藤田進演じる姿三四郎と、月形龍之介演じる桧垣源之助の、右京ケ原における対決を思わせるほどの迫力に満ちていると思う。

      丹波哲郎も名だたる剣客。そう簡単には勝負はつかない。しかし、戦場という修羅場をかいくぐって来た仲代達矢の剣の方が、わずかに勝っていた。そして、この時の仲代の言葉が、実にいいのだ。「あの男の剣はしょせんは道場の剣、実戦を知らぬ」と。戦乱の世を生きて来た本当の武士ならではの言葉だと思う。

      彼は、最後は井伊家の武士たちに囲まれ、自決して果てるが、その一匹狼としての志は、見事に貫いてみせるのだ。数ある時代劇の中で、これほど荘重にして、壮絶な映画は他にはないと断言出来る。

      武士は死の恐怖と闘い、それを乗り越えた時に聖化されてゆくものなのかも知れない。

      監督・小林正樹、脚色・橋本忍、撮影・宮島義勇、音楽・武満徹、主演・仲代達矢という、日本映画界最高の布陣で作られた、この名作に惜しみない拍手を贈りたいと思う。
      >> 続きを読む

      2017/01/11 by dreamer

      「切腹」のレビュー

    • 5.0 切ない ハラハラ

      三池崇史監督で市川海老蔵主演による2011年の本作品のリメイク版の『一命』は鑑賞済みで元作を未見だったのでレンタル鑑賞!!
      本作は1962年のモノクロ作品ですが若き日の日本映画界を代表する豪華俳優陣の共演で大変見ごたえのある作品でした。
      特に主演の仲代達矢の鬼気迫る演技は大変素晴らしく感じました。
      モノクロ映像でありながら素晴らしいカメラワークと演出そしてBGMが一体となり武家社会と武士道の非情さを見事に描いた素晴らしい作品です!! 私の作品評価は文句無しの星五つです!! 

      2015/12/25 by チャミー

      「切腹」のレビュー

    • 当時のBGMがどんな感じなのか気になります!

      2015/12/25 by メッシイ

    • 4.0 切ない ハラハラ クール

      海老蔵の「一命」は見ごたえありましたが

      こちらも観終わってグッタリ感ハンパないです。虚脱感もですけど・・・・・。

      なにしろ俳優陣が重たくて重たくて、空いた口が空きっぱなしです。

      モノクロってのがまた雰囲気抜群で眠気が飛んでいきました。 >> 続きを読む

      2015/06/18 by いわさかり

      「切腹」のレビュー

    • 4.0 クール

      「一命」を観て、ストーリーや海老蔵の演技に感銘を受け、オリジナルを観た次第です。
      「切腹」に比べれば「一命」はダメだというコメントを散見しましたが、私はそうは思いませんでした。確かに「一命」は三池監督らしく、切腹シーンはちょっとグロさが過剰です。しかしそれぞれ良いところが必ずあります。
      どちらを先に観るかによって評価が分かれる気がしました。

      2014/08/22 by takenuma

      「切腹」のレビュー

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