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ヘヴン

Heaven
ジャンル: ドラマ , ラブロマンス
公開: 2003/03/08
製作国: アメリカ , イギリス , ドイツ , フランス
配給: アスミック・エース

    ヘヴン の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿脚本をトム・ティクヴァ監督が映画化し、互いの人生の重荷を互いに背負い合う事で成約された崇高な愛の姿を描いた 「ヘヴン」"

      この映画「ヘヴン」は、ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿脚本を、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督が映画化した作品です。

      映画の舞台はイタリアのトリノ。美しい英語教師フィリッパ(ケイト・ブランシェット)は、夫や教え子を死へ誘った麻薬売人に復讐をしようと時限爆弾を仕掛けるが、失敗し、罪のない人々を巻き添えにしてしまうという、到底、許されない罪を犯してしまいます。

      彼女は拘留された警察署で、その残酷な事実を知らされ、罪悪感から気を失って倒れてしまいます。そんな彼女の手を優しく握る男がいました。それが、刑務官フィリッポ(ジョヴァンニ・リビージ)との運命的な出逢いとなったのです。

      映画の冒頭のヘリコプター操縦のシュミレーション画面。バーチャル感覚の映像で、空から下界が眺望される、天界と地界の危険な境界線を見せつけるような、このオープニングは、この映画のエンディングと対になっているのです。この映画のカメラは、俯瞰を多用しています。それは、「神の目」であり、神が天からフィリッパとフィリッポの運命を見守っているという構図が意識されているのだと思います。

      トリノの街を二度、上空から真っ直ぐに鳥瞰で捉えた映像が、非常に印象的で心に残ります。一度目はフィリッパが逮捕された直後、二度目は警察署でフィリッパがフィリッポの録音したテープを密かに聞いた後----。

      トリノ特有の幾何学的な建築物の構造が、現代社会の閉塞感を象徴するのと共に、フィリッパの静謐な心の鼓動を届けてくれているように感じました。

      この二人は極めて特異な状況のもとで、運命の出会いを果たし、離れられない存在となり、遂には一つに結ばれていく事になります。このフィリッパの行為は、社会的にも彼女自身にとっても許されないものなのです。

      しかし、自分を許せずにいる彼女の前に、彼女の善なる面を見て、その許されざる行為を許す人物が現われます。ただ、「終わりを待っている」彼女にとって、これは"究極の救済"なのです。許されない罪を犯すのも人間であれば、それを許すのも人間なのです。二人の愛の形は、人間に内包する"神の存在"を強く示唆するものであり、その意味では、キリスト教的な思想がにじみ出た物語だと言えるのかも知れません。

      フィリッパとフィリッポは誕生日も同じ、名まえも同じで、更には、トリノからトスカーナへの愛の逃避行につれて、服装や髪型さえも同化し、どんどんシンプルになっていきます。この人間の太古の姿へ近づいていくようなプロセスに、まるで神話のような世界感を感じてしまいます。

      「愛しているのか?」と尋ねるフィリッポの父親に、沈黙の末に、「イエス」と答えるフィリッパ。互いの人生の重荷を互いに背負い合う事で成約された崇高な愛の姿には、深い感銘を受けました。

      トリノの何か威圧的な景観とは対照的な、トスカーナの丘のなだらかな稜線と開放的な大自然が、よけいにその感動を盛り上げてくれます。大きな木の傍で裸になって対峙する二人のシルエットは、この大自然の中に溶け込んでいくようで、とにかく美しいのです。

      そして、エンディングの場面の、地界から仰望する天界の映像に、極限まで浄化され、高みに達しようとする愛の終着駅を見た思いがしました。

      未成熟な顔立ちが印象的で、イノセンスな存在感を漂わせるジョヴァンニ・リビージも素晴らしかったのですが、この映画は何と言っても、ケイト・ブランシェットの映画だと断言できるほどの圧倒的に素晴らしい演技を、我々観る者に見せつけてくれました。

      多くを語らないヒロインの心の葛藤と潔さを妖気漂う表情の内に秘め、感情の起伏を抑えながらも情熱的な演技を披露してくれたと思います。

      そして、セリフを極力少なくする事で、我々観る側からヒロインの心のより深い内面を探らせようとする、トム・ティクヴァ監督の演出も効果を上げていると思います。

      それにしても、詩のように洗練された脚本には、本当に心酔しました。やはり、クシシュトフ・キェシロフスキの美意識が結晶となってオーラを発揮しているのだと思います。
      >> 続きを読む

      2016/06/05 by dreamer

      「ヘヴン」のレビュー

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    ヘブン

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