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パラダイン夫人の恋

ジャンル: 外国映画 , ミステリー・サスペンス , ドラマ
公開: 1953/02/24
製作国: アメリカ

    パラダイン夫人の恋 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 3.0

      ヒッチコックの映画はほとんどノーマークだった私。

      プライムビデオで期間限定で無料で観られるヒッチコック映画が何本か上がっていたので『バルカン超特急』を皮切りに本作が二本目。観賞後は色々と調べたくなるのだが、ここはそれを抑え、まずは丸裸の印象を記すことに。

      まず瞠目したのは舞台となるさまざまな室内です。冒頭、パラダイン夫人がピアノを弾いている。そこへ執事が夕餉の時間を知らせに来る。天井の高い部屋は白く清潔で直線的で、冷ややかな印象を与えます。パラダイン夫人演じるアリダ・ヴァリは眉根一つ動かすだけで周囲の空気を変える、これまた稀代の美人。これがすぐさま逮捕され、収監される。収監舎はドイツ表現主義を彷彿とさせるような、これまたやたら空間ばかりをとる寒々とした外観・内観で、パラダイン夫人の凛と張り詰めた立ち居と調和しているんですね。晩餐の卓の上に灯る燭台と燭台の間に演説者がくるようにカメラを構えておくなど、画面構成の凝り方はさすがは巨匠、と唸らないではいられない丁寧な演出が持続します。この辺はのっけからミニチュアの嘘臭さをむしろ楽しむ風でもある『バルカン超特急』(しかしそれにしてもダサい邦題…)とは訳が違う。

      で、いっぽうのキーン夫妻の住まいにある、玄関から二階へと導く階段の曲線ですね、これがちょっと観ていてクラクラするんです。弁護士として絶頂期にあるキーンの稼ぎ具合のよくわかる、モダーンな建築で、外観はちょっとわかりませんが、中央が吹き抜けでその周りに部屋を配して多角柱のようになってるのではと思わせる、不思議な間取りなんですね。このねじれた感じが味噌で、あ、なるほど、これがキーン夫妻が直面する難局のメタファーになっているのだな、と一人合点。

      こうした表現は映画ならではと思うし、小説家がこれをやるのは無理とは言わないでも、なかなか大変だろう、と。ヒッチコックは生粋の映像作家なんだと、自分なりに再確認する瞬間です。

      機関車が登場するシーンが2回あって、ほんの一瞬なんだけど、目を見張るような素晴らしい絵を撮っている。自動車、馬車…乗り物に意識的な人だったんだな、と。ただ、馬の印象が全くない。動物はどう撮った人なんだろう…と思うと、俄然『鳥』が観たくなる。

      映画はゆっくりと彫りを深くしながら、やがて法廷劇へ。この人(ヒッチコック)、何でもできるやん! ともう目が離せません。ところがところが…。

      ※以下はネダバレ。
      なんか、全体的に変なんですね。美しきパラタイン夫人の弁護を夫に勧めたキーンの妻ゲイを演じるアン・トッドが、夫人に対する夫の恋情を疑い、幾度となく自分か裁判かを迫るような駄々をこね、君がそう言うなら僕は降りるよ、とキーンが言えば、「いいえ、私のためにもあなたは勝たなければ」とハッパをかける。まあ、うかうかと愛する夫をとられてたまるか…と、わからなくもない心理だが、それでも自分の心理を偽らない正直さよりは、夫を戸惑わせずとりあえず信じて見守る態度のほうが、古今東西を問わず美徳であろうし、他の形で気を持たせる方法はいくらでもあろうよ、と。拗ねてはけしかけ、けしかけては拗ねる、を最後まで繰り返すんですね。鬱陶しいのギリギリ手前までやってるかな、この奥さん。女とはこういうものだ、とヒッチコックが言いたかったのだとすれば、まあ、違うかな、というのが2020年の一日本人のアンサーです。小賢しさだけは、どうにもいただけない。

      パラダイン夫人のその後の演出もですね、「女の二面性」とか「女の複雑な心理」とか、言わんとすることはわかるんですけど、男とか女とか関係なく、理路は通しましょうよ、と。こっちが立てば向こうが立たず、の状況で、それが命の瀬戸際なら決断をしなければならない。その覚悟がないばかりに生まれるのが悲劇だとすれば、現代に生きる我々にとっては他ならぬ喜劇ではないか。そりゃ、あんたたちが言葉を尽くさないのが悪い、となるんじゃないかな。パラダイン将軍のサーバントのラトゥールが、肉体関係を持ってしまったパラダイン夫人を法廷で罵倒するのは、まったくもってわからない、というか、お門違いだろうよ、と。で、そこまで男を追い詰めているのは他ならぬ女の態度ですからね。これじゃ、キーンも頭を抱えるわいな。

      こうした法廷劇を経て、さあ、では夫婦仲を犠牲にし続けたあなたは今後どうしてくれるの? とゲイはキーンに最後に迫るわけです。

      仕事以上に私を愛して欲しいの、でも仕事で輝いてこそあなたなの、がゲイの言い分。パラダイン夫人であれば、「あなたは私との道ならぬ恋を将軍への裏切り、罪として責め苛む。でもあなたは私だけのものなのよ」、かな? こうして「女」に焦点が当たっているからこそ、判事の老婦人の、終始泣き笑いを浮かべて人を不安にさせる存在が、意味深長にもなるわけです。

      さてさて、大変な作品であることは確か。
      でも得心するかどうかはまた別の話。
      >> 続きを読む

      2020/09/18 by Foufou

      「パラダイン夫人の恋」のレビュー

    • ヒッチコックは高校生の頃、日曜洋画劇場で特集やってたので、ほとんど代表作を観ているのですが、これは知らなかった。今観ると、またちがった感想なんだろうなあ、と。 >> 続きを読む

      2020/09/18 by かんやん

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