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帰らざる夜明け

ジャンル: ドラマ , ラブロマンス
公開: 1972/09/30
製作国: フランス
配給: メトロ

    帰らざる夜明け の映画レビュー (最新順)

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    • 4.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "フランスの片田舎での人間の欲望と愛欲と孤独とが複雑に絡み合い、破綻の悲劇へと追いつめられていく風景的心理映画の佳作 「帰らざる夜明け」"

      この映画「帰らざる夜明け」は、フランスの短編小説の味わいを持った、"風景的心理映画"ともいえるもので、原作がフランスのメグレ警視シリーズで有名な推理作家のジョルジュ・シムノンです。

      1930年代の中頃、フランス中部の緑の田園地帯が背景で、田舎道を走るバスから中年の農家の女タティ・クーデルク(シモーヌ・シニョレ)が降り立ちます。重い荷物を引きずって、通りかかった若者が手を貸して、それが縁でジャンと名乗る旅の若者(アラン・ドロン)は、彼女の家の野良仕事の手伝いをするために雇われる事になります。

      このフランスの名女優シモーヌ・シニョレが演じる、女中あがりの後家さんは、十数年前に主家の父親に手ごめにされ、その息子にはらまされて死産、そして、その息子と結婚したけれども、飲んだくれの亭主は死に、残った舅のアンリ爺さん(ジャン・ティシェ)が今も年がいもなく夜な夜な彼女を求めて来る----。

      その彼女が舅を「いやらしい老いぼれめ」と罵れば、運河の跳ね橋を挟んで住む、亡夫の妹夫婦は老父を抱き込んで、彼女が支えてきた農場を横取りしようと狙っています。そうはさせじと、肩ひじ張って後家の頑張りを、シモーヌ・シニョレが、がさつな動作で絶妙に演じてみせます。いやらしいほどのうまさ、この映画の主役はアラン・ドロンではなく、実質、このシモーヌ・シニョレだといえます。

      やがて判明するジャンの正体は、殺人を犯して追われる身の医学生くずれですが、そんな若者が行きずりの年上の女の痛ましさに、ふと心惹かれ、彼女もまた、その優しさにすがって、女としての最後の炎を燃やします。

      だが、ジャンは、彼女の義妹夫婦の娘で、まだ16歳の若さで父無し子をかかえたフェリシー(オッタヴィア・ピッコロ)とも、抱き合ってしまいます。ふっくらと色白で、少女のういういしさを匂わせながら、けだるい風情で赤ん坊を抱きかかえたフェリシーにも、人生の残酷さと、人の世の生臭さが、不思議な哀しさで漂ってきます。

      結局、フェリシーの両親は、兄嫁のタティ・クーデルクを憎むあまり、ジャンにも敵意を重ね、彼の秘密をかぎとると、娘に命じてパスポートを盗ませ、それを持って警察に密告してしまいます。

      そして、映画のラストは、警察官のおおがかりな包囲で、逃れきれぬと悟ったジャンは、未亡人のタティ・クーデルクをかばって射殺され、彼女もまた、流れ弾を受け、燃えさかる家の中で息絶えるのです。

      あまりにも、むごすぎる悲劇ですが、映画はむしろ一つの風景の中の出来事として、淡々と描いています。運河があり、機帆船が通り、跳ね橋が上下する、その古風でのどかなロケーションが実に素晴らしい効果を上げていると思います。

      ささやかな地域社会の、まだささやかな片隅にも、人間の欲望と愛欲と孤独とが複雑に絡み合って、破綻の悲劇へと追いつめられていく、この物静かなニヒリズムがとてもいいと思います。

      この頃のアラン・ドロンは、彼のあまりにも美しすぎる美貌の意識をかなぐり捨てて、なんでもやってやろうと役柄の幅を広げていた時期で、「暗殺者のメロディ」「高校教師」「燃えつきた納屋」等と共に、哀しい優しさ、優しい苦さをキメの細かいニュアンスで演じていたと思います。
      >> 続きを読む

      2016/05/31 by dreamer

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