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木靴の樹

L'albero degli Zoccoli
ジャンル: ドラマ
公開: 1979/04/28
製作国: イタリア
配給: フランス映画社

    木靴の樹 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない 元気が出る クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      このイタリアの名匠エルマンノ・オルミ監督の「木靴の樹」の中にこんなシーンがあります。

      「ほう、トマトじゃないか。もう出来たのか」と、じいさんのお得意先の街の商店主が、驚きの声をあげます。そこへ、人々がもの珍しげに寄って来ます。通行人もびっくりしたように、、普通より2週間も早く現れた赤いトマトを振り返るのです。

      このシーンを観て、一年中トマトが食卓にのっている事が当たり前だと思っている人々が何も感じなかったとしたら、その人は世界が絶賛した、この「木靴の樹」という映画が語る世界には無縁の人なのかも知れません。

      この映画はそれに先立って、じいさんが半年前、雪の降る夜中に起き出して畑に鶏糞を埋めるところを見せます。牛小屋の隅にトマトの種子をまいた箱を置き、数センチに育った苗を植えるところも見せます。

      人間が生活を営むというのは、まさにこういう生き方をいうのだろうと思ってしまいます。

      北イタリア、ミラノ北東のベルガモのある農園。19世紀末なので、分益小作農の時代。小作農民は収穫の3分の2を地主に納めなければならないから、彼らは皆一様に、恐ろしいくらいに貧しいのです。

      ラストでここを追われる一家の、家具といえば小さな馬車に簡単に乗ってしまうだけのもの。それなのに、子供だけはたくさんいるのです。

      物質的な繁栄を一途に追い求めて来て、それに成功したかに見える日本を含む先進国から見ると、これが果たして人間の暮らしと言えるのだろうかと、いう事になるのかも知れません。

      だが、みじめであるはずの彼らの暮らしが、ひょっとしたら我々の今の日々よりましなのではないか----と、ふと感じてしまうのです。

      電気もないから、当然、電化製品は一切ありません。履物は木靴。だが、例えば、共同住宅に住む4家族が夜になると厩舎に集まり、語り合うのです。楽しい話も、怖い話もあります。こんな交流が果たして今の我々にあるだろうかと考えてしまいます。

      町の紡績工場に働きに行く娘が、若者に見初められ結婚するエピソードがあります。彼らのハネムーンは、近くのミラノの修道院ですが、そこで1歳の孤児を引き取って帰って来ます。異常なはずのこの出来事が、全く淡々と描かれ、自然に納まるところに納まっていきます。

      このエピソードが示しているように、彼らは"常に神と共にいる"のだと思います。よく祈るし、ふだんの会話にもしばしば神の話が出て来ます。このように、神というものを信じられた頃の人々は、物が豊かになった代わりに、信じるものを失った、今の我々よりも遥かに豊かだったのではないかとさえ思えてきます。

      小作農の4家族の1年が、静かに語られていくこの映画「木靴の樹」は、さり気ない表現のようで、実に丹念に細やかに演出されていると思います。それは、ライトを一切使わず、自然光と油灯の明かりだけで撮影されているのにもかかわらず、これほどの繊細で奥の深い画面を作りだしている事からもうかがえます。

      ドラマティックな描写というものに慣らされた、今の人々にとって、この映画が持つ"ストイシズム"は、観初めの段階では、一見、異様に映るかも知れませんが、しかし、世の中の多くの市井の人間は、こんなふうに一生を送るはずなのかも知れません。

      とにかく、一度は観るべき価値のある、"透徹したリアリズム"に満ちた作品だと思います。

      尚、この映画は全世界で絶賛され、1978年度のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール、世界化運動審査員賞を、また同年のフランスのセザール賞の最優秀外国映画賞を、ニューヨーク映画批評家協会賞の最優秀外国映画賞を、それぞれ受賞しています。
      >> 続きを読む

      2016/10/03 by dreamer

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