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長崎から北海道に移住する家族のロードムービー。万博の頃の日本を実感できます。
2019/07/05 by PapaShinya
「家族」のレビュー
このレビューはネタバレを含みます。 この山田洋次監督が、1970年に撮った映画「家族」は、九州の炭鉱で働いていた炭鉱夫の一家が、石炭から石油への燃料の切り換えの時代でリストラされて、北海道で農業をやろうとして、家族をあげて日本列島を南から北へ旅をする物語です。この映画で描かれている1960年代は、日本経済の高度成長期で、日本人は豊かさに向かって希望に溢れていたのです。その喜びの表現として、例えば大阪での万国博覧会もあったのです。あの経済成長の土台には、石炭から石油へのエネルギーの切り換えという国の政策があり、それまで日本の工業の牽引力だった石炭産業が切り捨てられ、多くの炭鉱労働者がまるで難民のように各地に四散していったわけです。日本は難民を出したことのない幸福な国であると我々は思いがちですが、実は彼らこそ国内難民のような人々だったのではないか。高度成長に浮かれて当時のメディアは、それをあまり話題にもしていませんでした。しかし、山田洋次監督は、これらの人々の歩むであろう道をしっかり見つめていたのです。そして、1970年に日本国内の各種の映画賞を総ナメにした傑作が、この「家族」なのです。地道に働く人々の喜びや悲しみを見つめ続けてきた映画作家として、さすがだと思います。現在、世界の大きな不安定要因になっている国際的な政治難民や経済難民たちに較べれば、この映画の、九州の炭鉱で職を失って北海道の農場を目指す一家は、ずっと幸せそうです。日本列島を縦断する列車の旅はそれなりに楽しいし、大阪万博だってワクワクしながら見物したりします。倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆などの好演で、家族の人々の善良さと結束の固さも素晴らしいと思います。家族はそれなりにあの万博の雑踏を楽しむのですが、あまりの混雑で無理をして疲れたせいか、幼い子供は東京に着いたら具合が悪くなって、病気で死んでしまいます。また老いた父を引き受けてもらうつもりで立ち寄った、広島県の福山のコンビナートにある次男の家で、それを断られるという辛いエピソードもあって、この家族の置かれた立場の厳しさをくっきりと描いています。日本経済の高度成長に伴う無理を、何気なく、しかし実に鮮やかに表現した映画になっていると思います。近代社会は、人間の労働をただ能率だけで測って、働くことの面白さ、楽しさを考えには入れません。伝統的な馴れた仕事にあった作業のコツ、楽しさをもっと大事にしたい。少なくともそういう気持ちが無視されるようだったら、山田洋次監督のヒットシリーズとなった「男はつらいよ」での寅さんのような生き方がマシだ。そんな気持ちがそこにあるのだと思います。この「家族」という映画は、山田洋次監督が「男はつらいよ」シリーズを営々と作り続けていたその合間に作られた作品です。合間というと何か、主な仕事の片手間にやったことのようなニュアンスに受け取られるかも知れませんが、例えば後の「幸福の黄色いハンカチ」や「遥かなる山の呼び声」のように、いずれも渾身の力作であって、むしろこれらのどちらかと言えば地味めで会社側は避けようとする企画を存分にやれる立場を確保するためにこそ、確実なヒットが約束されている寅さんのシリーズを、続けないわけにはいかなかったのかも知れません。どうしても堅気になれなくて、ヤクザな暮らし方の自由を楽しんでいる寅さんの映画を、数多く作った山田洋次監督が、その合間合間に、要所要所に、念には念を入れるように、寅さんに堅気の働く人たちへのまっとうな敬意を見失わせないためにも、この地道な労働への敬意をていねいに描いて、そこに美しさを見い出す、これらの作品を作ることが映画作家として必要だったのだと思います。 >> 続きを読む
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家族 カゾク 映画 「家族」 | 映画ログ
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