こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 映画ログ - 映画ファンが集まる映画レビューサイト →会員登録(無料)

小早川家の秋

The End of Summer/Early Autumn
ジャンル: ドラマ
公開: 1961/10/29
製作国: 日本
配給: 東宝

    小早川家の秋 の映画レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順 すべての映画レビューとコメントを開く
    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "日本を代表する世界的な名匠・小津安二郎監督が古風な俳諧の境地に近づき、より簡素に抽象化された作品世界を作り上げた 「小早川家の秋」"

      この映画「小早川家の秋」は、小津安二郎監督が東宝に招かれて、晩年に撮った作品で、その作風はますます"古風な俳諧の境地"に近づき、より簡素に抽象化されていくように感じます。

      普通の一般的な映画の特性と考えられている現実の写生感、劇的な起伏や波乱、そのようなものを一切否定して、"何も言わない"簡素さから、余情の微妙なニュアンスをにじみ出させる事----。

      初めて東宝へ招かれて撮ったこの映画でも、小津監督のこの美学は従来と全く変わっていないと思います。

      関西の造り酒屋の静かな没落と解体が、おだやかなユーモアで明るく朗らかに語られていて、しかも、悲哀の余情すらも生み出しているように感じます。

      こまめで、わがままで、遊び好きな隠居(中村鴈治郎)。この憎めない老人が、昔の女(浪花千栄子)とよりを戻して、とうとう女の家で死を迎えるまでを中心に、彼の家族やその周囲の群像が、夏から初秋への季節の移り変わりを背景に、さらっとスケッチされていきます。

      老人が死んで、養子の当主(小林桂樹)は大企業への合併を決心しますが、その時、家族たちは、あらためてこの家の大黒柱が、今まさに崩れ去った事を知るのです。

      そして、長男の未亡人(原節子)は再婚の話も断って、一生をこの家で送ろうと決心し、末娘(司葉子)は北海道の恋人(宝田明)のもとへ去って行きます----。

      これらの人間群像に、当主の嫁になっている長女(新珠美千代)や、原節子の縁談の相手(森繁久彌)、浪花千栄子のひとり娘(団玲子)といった人々を加えて、この出演俳優の顔ぶれから考えて、この作品は当時の東宝のスター総出演といった製作側の要請で作られたものだと思いますが、小津監督と野田高梧の脚本は、その点でも見事な職人芸を見せ、それぞれの俳優を適材適所に配した上に、さりげなく一人一人に一場面づつ、"ひとり芝居"を与えるうまさは、憎いほどの計算がされているなと感心してしまいます。

      また、これらの東宝のスター俳優たちも、確かに小津監督のイメージに応えていますが、しかし、皮肉な事に、ただひとりずば抜けて見事なのは、大映から出演した中村鴈治郎なのですが、この万兵衛という老人のアクの抜けた人間くささは、小津監督がまるで中村鴈治郎に自らの分身をひとつ託したと思えるくらい、生き生きとした、ひとりの"存在感のある人間像"を形作っていると思います。

      しかし、その老人をニコニコと屈託もなく、叱り飛ばす新珠美千代、老人を軽くいなす団玲子、そして、この家の二人の美しい余り者といえる役柄の原節子と司葉子----、これらの女優たちが各々の、いかにも周りにいそうな"感じ"を表現していた事も、この映画を大変ソフトでデリケートな、ある意味、華やかな雰囲気にしたのだと思います。加えて、黛敏郎の音楽がその点をよく活かして、やはり品があり、格調さえ感じられるムードを醸し出していたと思います。

      小津監督がその晩年に東宝という他社へ出向いて、珍しく"関西"というものを描いた事に、非常に興味深いものを感じました。名カメラマンの中井朝一のカメラが写しとった"関西"は、特に茶色の深くて落ち着いた色彩が見事でしたし、そして、何よりも、小津監督が本拠の松竹では、もっぱら東京人を描き、他社へ出ると、必ず東京以外の場所に、日本と日本人を見ようとする----、その対比が非常に興味深く感じられるのです。

      根っからの東京人であり、松竹人であるこの監督には、やはり他社は"地方"なのかも知れません。
      >> 続きを読む

      2016/07/23 by dreamer

      「小早川家の秋」のレビュー

    この映画を最近、ラックに追加した会員

    小早川家の秋
    コバヤカワケノアキ

    映画 「小早川家の秋」 | 映画ログ

    会員登録(無料)

    今月のおすすめ映画
    読書ログはこちら
    映画ログさんのラック

    最近チェックした映画