こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 映画ログ - 映画ファンが集まる映画レビューサイト →会員登録(無料)

終電車

ジャンル: ドラマ , ラブロマンス , アクション
公開: 1982/04/10
製作国: フランス
配給: 東宝東和

    終電車 の映画レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順 すべての映画レビューとコメントを開く
    全1件
    • 5.0 切ない ハラハラ クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      このフランソワ・トリュフォー監督のフランス映画「終電車」は、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞で、1980年度の最優秀作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚本賞・音楽賞・撮影賞・編集賞・美術賞・音響賞の10部門を制覇した、フランス映画らしい魅惑をたたえた名作だ。

      原題名は「地下鉄の最終電車」。甘く哀しい響きを持ったいい題名だ。だが、その裏側には、もっと厳しい意味が隠されているのだ。

      第二次世界大戦下のパリ。ナチス・ドイツ軍に占領されていたこの街では、市民の深夜の外出は厳しく制限されていた。人々は地下鉄の最終電車に何としてでも乗ろうと、駆け込んでいた時代だ。映画の題名は、ここからきている。

      一つの時代を語る題名であると同時に、ギリギリの土壇場に来ている人々の物語ということも暗示されているのだ。

      この時代は、食糧は乏しく、暗い毎日が続いていた。人々は心の糧を求めて演劇へと押し寄せて来る。

      そんな劇場の一つモンマルトル劇場。有名な演出家でもあるこの劇場の持ち主は、ユダヤ人であるが故に、地下に身を潜めている。表向きはパリから脱出したと噂を流して----。

      その彼の指示を受けながら劇場をきりまわし、新しい戯曲の上演に情熱を傾けているのが、女優でもある演出家の妻マリオンなのだ。針子から拾われて夫に育てられたこの女優。地下の夫に比べてぱっと周囲を明るくする程の美しさ。

      その彼女が、年下の相手役の青年ベルナールに、いつの間にか心惹かれていく。決してベトベトと哀しく見せる三角関係ではなく、むしろ彼女は、表情や姿態の中に彼への思慕を見せようとはしない。逆に冷たく、そっけなく---。

      この許されぬマリオンとベルナールの密かな恋愛が、詩情豊かに、かつスリリングに綴られていくのだ。

      こうした状況の中、彼女の気持ちを一番最初に見抜いてしまうのが、地下生活を続けている夫なのだ。この設定は、あの名作「カサブランカ」をどうしても思い出してしまう。

      夫の中に知的な男の理想を見て、一方、行動的な男の理想をもう一人の男性に発見する女性。これはもう、「カサブランカ」でイングリッド・バーグマンが演じた女性像と完全に重なってしまう。共に大戦下の"極限状況"だからこそ、"女の真実"が透けて見えるのかも知れない。

      この女優を演じているのが、フランスを代表する女優のカトリーヌ・ドヌーヴだ。かつて若い頃はお人形さん的な美しさだったこの女優だが、歳を重ねるにつれて、今や内側に熱い血のときめきを感じさせ、"女の妖しい魅惑"を見事に演じ切って見せるのだ。

      かつてのフランス映画界を代表した大女優、ダニエル・ダリュー、ミシェル・モルガン、ジャンヌ・モローと並んで、カトリーヌ・ドヌーヴは確実に歴史に残る大女優になっていると、この映画を観てつくづく思う。

      相手役の青年を演じるジェラール・ドパルデューも、今やフランス映画界を代表する演技派のスターだが、この映画でもいつもの深みのある、うまい演技を示していて、あらためて彼の芝居のうまさには感心してしまう。

      この青年はレジスタンスに身を投じ、地下の夫にもゲシュタポの魔の手が迫ってくる----。

      ナチスの御用評論家、映画スターを目指す新人女優。様々な人間群像を散りばめながら、トリュフォー監督の演出は、決して濡れた湿ったものではなく、むしろ渇いたさりげなさで、"時代と人間"を切り取って描いていく。

      この映画は、ある意味、風俗映画と見ることも出来るのだが、その底にギラギラする"人間の強さ"が隠されているのが、この映画の素晴らしいところだろうと思う。

      そして、この映画は我々観る者に、哀しみの終幕だと思わせておいて、もう一つひっくり返して見せるラストのドヌーブの姿に、堂々たる"女のエゴイズム"が見えたり、劇場を追われかける演出家が「劇場は私のもの、出て行かない」と言うあたりには、フランス人の"強烈な意志と逞しさ"が表明されているように感じる。

      この「終電車」は、本当に久しぶりに見るフランス映画らしい魅惑に満ちた、いい味わいの映画であったと思う。
      >> 続きを読む

      2017/01/18 by dreamer

      「終電車」のレビュー

    終電車


    映画 「終電車」 | 映画ログ

    会員登録(無料)

    今月のおすすめ映画
    読書ログはこちら
    映画ログさんのラック

    最近チェックした映画