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肉弾

The Human Bullet
ジャンル: ドラマ , 戦争
公開: 1968/10/12
監督:
製作国: 日本
配給: ATG

    肉弾 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 5.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "終戦間近のひとりの学徒兵の悲劇的な青春を極私的戦争物語として描いた、戦中派・岡本喜八監督の執念の傑作 「肉弾」"

      この映画「肉弾」の岡本喜八監督は、戦争を西部劇風にパロディ化した活劇調の喜劇「独立愚連隊」シリーズで世間に認知され、また、太平洋戦争の終戦時の天皇と軍と政府の首脳部の動きを描いた、商業的大作「日本のいちばん長い日」を大ヒットさせました。

      しかし、これらの映画は、岡本喜八監督にとっては自己の戦争体験の最も核となるべき、痛切なところを描ききれていないという思いを長年持ち続け、これこそが、自分が経験した"戦争の真実"だという思いを込めて、この「肉弾」の脚本を書き、映画化に向けての執念を燃やしていました。

      本土決戦に備えての特攻作戦の準備と称して、愚かでバカげた訓練に明け暮れる学徒兵の小部隊の姿を描いたこの脚本に対して、彼が所属する東宝はこれを企画として取り上げず、結局、岡本喜八は自分で映画製作費の半分を用意し、自主的な作品としてATGで映画化を実現したのです。

      その結果、大手の映画会社の商業映画のヒットメーカーだった岡本喜八監督が、何としてでも表現したいという強い心情に衝き動かされて、私財を投じてまでも撮りたかった作品であり、それだけの熱い切迫した真摯な思いに溢れた傑作になったのだと思います。

      寺田農の演じた名前のない学徒兵あいつが主人公で、本土決戦に備えて、とうてい勝利に結びつくはずのない愚かな訓練でへとへとになり、まともに物を考える余裕すらない状況にありながら、それでもなお、死ぬための自分自身が納得出来る理由を求めて、彼が所属する小部隊のある太平洋岸の町と砂浜をさまよい歩き、空襲下の状況の中で健気に生きる人々との出会いと別れを繰り返しながら、彼は必死に"彼らを守るために死ねる"と思い込もうとするのです。

      特に、古本屋の老夫婦(笠智衆、北林谷栄)やおさげの女学生(大谷直子)と出会い、やっと死ぬ理由が見つかったと喜んだのもつかの間、空襲で町は焼け、みんな死んでしまうというエピソードが、ほろ苦くも切なくて胸を打ちます。

      その事は主観的に考えれば、実に悲愴極まりなく、客観的に考えれば、実に無意味な事なのです。そしてその両面を渾然一体とする事に成功したところに、この作品の独創性があるのだと思います。

      結局、この学徒兵の主人公のあいつは、ドラム缶に魚雷を縛り付けただけの"秘密兵器"で、太平洋上に浮かんだまま終戦を迎えた彼は、骸骨になって漂い続けるのです----。

      仲代達矢のすっとぼけたナレーションで、悲劇的な青春をスラップスティックとして笑い飛ばしつつ、それでも"バカヤロー"と叫ばざるを得ない、岡本喜八監督の仲間の多くが戦場で死んだという、戦中派の無念の思いがほとばしり出ているのだと思います。

      岡本喜八監督にとって、この映画と同じ年に東宝で公開された「日本でいちばん長い日」が、天皇と政府、軍の上層部にとっての終戦秘話であったとすれば、この「肉弾」は、そこからこぼれ落ちた思いをユーモアを込めて描いた"極私的終戦物語"と言えるのかも知れません。

      だからと言って、「日本のいちばん長い日」がつまらない映画というわけでは決してなく、大上段から振りかぶっても、斜に構えて小枝を仕掛けても、共にとてつもなく面白い映画を作ってしまうというところが、さすが岡本喜八監督の岡本喜八監督たる所以だと思います。
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      2016/07/26 by dreamer

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