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冬の猿

Un Singe en hiver
ジャンル: ドラマ , アクション
公開: 1996/12/21
製作国: フランス
配給: ケイブルホーグ

    冬の猿 の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 4.0 切ない クール

      ネタバレ   このレビューはネタバレを含みます。
      "粋で洒落た感覚のフランス映画の小品 「冬の猿」"

      ジャン・ギャバンとジャン・ポール・ベルモンドのフランスの二大俳優共演の「冬の猿」は1962年度製作の映画で、日本での公開が1996年で、監督が「ヘッドライト」の名匠アンリ・ヴェルヌイユで、同じヴェルヌイユ監督でジャン・ギャバンとアラン・ドロンの二大俳優が共演した、粋でクールで洒落たギャング映画の「地下室のメロディー」をワクワクしながら観たフランス映画ファンとしては、このギャバンとベルモンドが共演していたという伝説的な幻の映画をようやく観る事が出来ました。

      映画の舞台はノルマンディー海岸近くのとある田舎町。ギャバンがそこのホテルの主人で、ベルモンドが泊り客。この親子ほども年齢の離れた二人の男の心の触れ合いが淡々と静かに描かれていくのですが、何の劇的な起伏もなしに、あまりにも淡々としすぎています。

      キャバンとベルモンドとヴェルヌイユという当時としては、フランスの豪華な顔合わせなのですが、とにかく質素で地味な映画です。

      これでは、1962年当時、興業的な見込みが少ないという事で、恐らく日本の配給会社が二の足を踏んで公開しなかったのではないかと思われます。

      しかし、34年後の1996年に日本でも公開され、その後、DVDも発売され、ようやく鑑賞する事が出来たという次第です。

      けれども、この映画を観終えての感想は、なかなかどうして捨て難い、良い味わいを持った映画で、大変面白いと思いました。

      公開当時56歳だったギャバンは、堂々とした貫禄で、盛んに揚子江の話をします。昔、兵隊として中国に行った事があり、揚子江は思い出の河だと話します。一方、当時29歳だったベルモンドは、スターとして日の出の勢いのある頃で、闘牛士に憧れていてスペインの話ばかりをします。

      この二人のとりとめもない会話が、この映画の核心部ともいえる、後半の場面の重要な伏線になっています。

      この二人が一夜、酒を酌み交わし、もうベロンベロンに酔っぱらってしまいます。二人で深夜の街路でバカ騒ぎをして、踊りまくります。住民から怒鳴られると、ベルモンドが子供を預けている修道院へ行き、「院長出て来い!」などと叫ぶ始末で、それからベルモンドは門のてっぺんによじ登り、ギャバンの方を向いて両手を大きく広げ、「僕、キリスト!」などと言って磔のポーズをとったりします。

      そこで門が開き、ベルモンドが落ちそうになり、この深夜の大騒ぎに何事かとびっくりして出て来た修道女に、「子供を渡さないと総攻撃を敢行するぞ!」と、今度はギャバンがわめき出します。

      酒を飲む映画はこれまでも数多く観て来ましたが、このように、ぐでんぐでんの酔態をこれでもか、これでもかというくらいに執拗に描写した映画も珍しいと思います。このような場面を延々と見せられると、不快感を覚える人も多いかと思いますが、ところが、この後、修道院長に叱られて退散するあたりから、状況が一変して来ます。

      二人は雑貨屋へ乗り込み、店長と一緒に海岸で、何と花火を盛大に打ち上げるのです。とにかく、この花火が凄い花火で町中大騒ぎになり、警察まで出動して来る事になります。

      そこで、ギャバンが大声でこう叫びます。「祭りはまだまだ、これからだあ!」と------。

      ここにきて、ああこの映画は、異郷への旅を夢見つつも、わびしく厳しい現実というものに、甘んじなければならない二人の男の、"人生一度だけの祭り"なのだなと、はたと納得させられるのです。

      そして、訪れる翌日の祭りの後の空虚な静けさ、わびしさ、喪失感----。この優れて映画的なヴェルヌイユ監督の演出が実にうまいんです。

      駅のベンチに一人淋しく座るギャバンを捉えたショットの美しさは、フランスのヌーヴェル・ヴァーグ以前のフランス映画が持っていたであろう、古き良き時代の懐かしい雰囲気を醸し出していて、本当に息をのむような見事なショットでした。

      アメリカのハリウッド映画にはない、淡々として地味ではあるが、情熱を内に秘めたフランス映画の粋で洒落た感覚のデリケートな味わいの映画というのも、たまには良いものです。
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      2016/04/11 by dreamer

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