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金星ロケット発進す [DVD]

ジャンル: SF
監督: クルト・メーツィヒ
キャスト: オルドリッチ・ルークス , 谷洋子 , イグナーチ・マホフスキー , ミハイル・ボストニコフ , ルチーナ・ウィンニッカ
形式: DVD 78分 Color , Subtitled
定価: 780 円
発売元: 有限会社フォワード

    金星ロケット発進す [DVD] の映画レビュー (最新順)

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    全1件
    • 3.0

       1970年、第二次世界大戦後まだ25年しか経っていないが、地球人の宇宙技術は、高度に進歩し、太陽系内の惑星にも宇宙船を飛ばせるところまで発達していた。

       この年、ゴビ砂漠で奇妙な物体が発見され、分析の結果、それは一種の音声記録装置であり、1908年の、隕石の衝突で起こったと言われていた、シベリア・ツングースカ大爆発事件は、実は、金星から飛来した宇宙船が事故か何かで地表面上で爆発したものであり、その際に、爆発前に宇宙船から投げ出されたものが、実は、ゴビ砂漠で発見された物体であると結論付けられた。

       それを受けて、世界各国は金星に向けてメッセージを送信するが、金星からは反応がない。そこで世界の科学者グループは、ソ連の宇宙船「Kosmokratorコスモクラートル」で金星を探査をすることを決定し、世界から選りすぐられた科学者8人が金星に向けて出発する。

       こうして始まる本作は、旧東ドイツDDRの映画製作会社DEFA(デーファ)が、ポーランドと合作して制作した、最初のSF映画である。ポーランドにとっても最初のSF映画であった。原作は、ポーランド人Stanislaw Lemスタニスワフ・レムの『金星応答なし』(原題:Astronauci アストロナウトたち;別名:『死の惑星』で、1951年に発表)である。

       さて、世界の科学者8人グループとは、アメリカ人原子物理学者 Hawling、ソ連人コスモナウトArsenjew、ポーランド人主任技師 Sołtyk、アフリカ人テレヴィジョン技術者 Talua、インド人数学者Sikarna、中国人言語学者 Tschen Yü、ドイツ人パイロット Brinkmann(Günther Simon)、それに日本人女性医師オギムラ・スミコ(谷洋子)である。現代であれば、イラン人やイスラエル人がこのグループの中に入ってもいいであろう。

       ドイツ人パイロットのブリンクマンは、スミコと昔恋仲の関係にあった間柄で、何かの理由で二人は別れている。ストーリーの展開の中で、次第にスミコが本作の主人公であることが分かる。というのは、スミコの父親は、宇宙物理学者として、作業中、月面で亡くなっているという背景があり、それが、彼女を宇宙飛行に向かわせた一つの理由でもある。

       さらに、彼女は、戦時中に日本で生まれ、広島の原爆投下で、母親を失っており、自身、放射能汚染を受けたことから、子供が作れないと医師に言われているのである。こうして、本作には意外にも広島原爆投下が大きなモチーフになっている。

       実は、本作は反核兵器がテーマになっており、東西冷戦の文脈の中、米ソの核武装が益々進めらていれる状況に、金星の話というオブラートに包みながら、核戦争がどんな結果をもたらすものかと警鐘を鳴らしているのである。ゆえに、戦後25年という近々未来にし、1945年の広島原爆投下からあまり時間を置きたくなかった脚本家たちの、ストーリー構成上の「お家の事情」があったのである。

       この反核兵器がテーマということは、本作の西側ヴァージョンにもそれが「マイナスに」反映されている。ドイツ語原題:Der schweigende Stern『沈黙する星』は、レムの別名原作名『死の惑星』に対応しているが、西ドイツでの題名は、『宇宙船ヴェーヌス号、応答せず』、日本語題名は、『金星ロケット発進す』と、ほぼ英語題名First Spaceship on Venusに対応する。しかも、英語ヴァージョンは、79分または82分にカットされ、とりわけ、広島原爆投下は完全に「検閲」されてストーリーから除かれている。という訳で、日本人としては、是非とも、もともとのヴァージョンを観てもらいたいものである。

       金星ロケット・コスモクラートルの未来主義的なディザインは、さすがにバウハウスの機能美を示し、ロケット基地のミニチュアもまた精巧に出来ている。また、金星ロケット内のコンピュータや操縦盤、映像装置などは、「過ぎ去った未来」のオーラ、或いはレトロ感があって中々見捨てたものではない。戦車を小型化したように、キャタピラーで移動するロボット・オメガは、「砲塔」に当たる部分を改造してセンサーで情報を取れるようになっており、乗組員とチェスに興じる場面は、本作の真面目なテーマにSF的一興を添えるところとなっている。美術監督は、Alfred Hirschmeier(アルフレート・ヒルシュマイアー )で、DEFAを代表する美術監督の一人である。

       最後に女優谷洋子について一言:
      パリ留学中であった経済学者・猪谷善一の娘としてパリで生まれた谷は、東京女子高等師範学校附属女学校を経て、戦後に津田塾大学を卒業し、1950年、カトリック教会の留学生として生まれ故郷のパリに「戻る」。パリのソルボンヌ大学で哲学と美術を学ぶかたわら、やがてマルセル・カルネ監督に見いだされて1954年以降女優として活動を始める。1958年制作の英国映画『風は知らない』(ラルク・トーマス監督ダーク・ボガード主演)で初めての主演を演じ、国際的にも評価を得て、DDRの1960年制作の本作でも主演級の役を演ずる。その後は、あまり役に当たらず、テレビ映画などにも60年代末まで出演したりしていたが、次第に活動の重点をフランスでの演劇界に移し、それなりの評価を受ける。1999年享年70歳でパリで死す。
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      2021/06/15 by Kientopp55

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    金星ロケット発進す [DVD] - クルト・メーツィヒ | 映画ログ
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    JANコード:4571244171123

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