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瀬戸内少年野球団


    瀬戸内少年野球団 の映画レビュー (最新順)

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    • 4.0 切ない クール

      "子供の目のリアルさで今まで見失っていた戦後を新しく発見し直そうと、篠田正浩監督が描く戦後グラフィティ 「瀬戸内少年野球団」"

      この映画「瀬戸内少年野球団」は、昭和の歌謡史において光彩を放った名作詞家の阿久悠の原作で、このタイトルには、「ジョニーへの伝言」「北の宿から」「津軽海峡冬景色」等々、歌謡界に新風を吹き込んだ作詞家のセンスがきらめいています。

      篠田正浩監督は、このタイトルネームに、「瀬戸内」で源氏に討たれた平家寂滅の響きを重ねているような気がします。

      原作では戦時中から島に隠棲していた退役軍人に代えて、敗戦後、戦犯処刑の日を予期しながら、郷里に一時の安らぎを求めようとする海軍の提督(伊丹十三)とその娘の美少女武女(佐倉しおり)に脚本の田村孟は焦点を当てています。

      子供の目のリアルさで今まで見失っていた戦後を新しく発見し直そうとする阿久悠と篠田正浩の二人には、遠い敗戦の日への郷愁があるのだと思います。

      阿久悠の詩情が、子供の目となって一見、明るく輝いてみえます。しかし、この映画は少年たちの野球映画ではなく、終戦時に子供たちであった多くの人たちの複雑な思い出が甦ってくる、戦後グラフィティなのかも知れません。戦犯を覚悟して、それまでの一時の安らぎを淡路島の自然と人情の中に求める提督とその娘の美少女に焦点をおいた脚本は原作以上に優れていると思います。

      特に、瀬戸内の自然の中に、敗戦の老若男女の姿を、自然の一部として見据えた、宮川一夫のカメラには、フェデリコ・フェリーニ監督の「アマルコルド」のような情感が溢れているように思います。

      篠田正浩監督はこれまでにない最高の演出力を発揮していると思うし、主役の駒子先生役の夏目雅子は、「二十四の瞳」の高峰秀子を連想させるような力演を示していたと思います。

      そして、バラケツと言われるやくざ者を気どる三郎の大森嘉之少年なくしては、この映画は出来なかったのではないかと思われる程の存在感を示しています。

      この映画の少年たちの目は、「青ざめた母」が、連合軍の兵士にレイプされるところを見守った娘ハンネよりは澄んでいたと思います。しかし、その心は、戦後の教科書のように、黒く墨でぬりつぶされた傷を負っているのです。

      この映画の中で、駒子先生が子供たちに語りかける、「日本は占領されました。この島にも進駐軍が来ています。でも私たちの心の中まで占領されたわけではありません。だから、いじけた顔をしたり、こそこそしたり、その反対に、べたべたまつわりついて、なれなれしくしたり、そういう事は絶対にしてはいけません。心は占領させてはいけないのよ。堂々と、私たち、自分のまっすぐ前だけを見て----」という言葉が、いつまでも観ている私の心の中に澱のように残り続けるのです。
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      2016/07/01 by dreamer

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